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zoom RSS 革命歌劇はどういう歌唱法で歌われたか?

<<   作成日時 : 2007/02/15 19:36   >>

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田月仙女史の著「海峡のアリア」に、彼女が1985年、北朝鮮に招待され金日成の前で革命歌劇「血の海」(ピパダ)の中のアリアを歌ったことについて、次のような記述があります。
 私はゆっくりと膝を曲げ、丁寧に深いお辞儀をした。拍手の後、キム先生が指揮する革命歌劇「血の海」のオーケストラの前奏が始まった。
 おそらく北朝鮮のいたるところでこの歌は歌われてきたのだろう。しかし、今歌う私の歌は、それまでの北朝鮮式の歌唱法ではない。かつては「ブルジョア思想」と批判の対象にもなった西洋オペラの技術を含む歌だ。


さて、ここで疑問があります。「ブルジョア思想」と批判されたのは、「西洋オペラ」なのか、「西洋オペラの技術」なのか、です。しかし、「歌唱法」の話題もあり、「技術」も批判された、と取れる文章です。

さて、私が思うに、金日成、金正日父子は、芸術のわかる人達です。人民軍功勲国家合唱団というのがあり、男声合唱なのですが、これは西洋式のベルカントの発声、つまり、田月仙女史の言うところの、「北朝鮮式の歌唱法」ではなく、「批判の対象にもなった西洋オペラの技術」で歌っています。一人ひとりはすばらしい歌唱力です。

 しかし、お父ちゃま(山梨学院大学経営情報学部宮塚利雄教授)と私・のまりんが文春新書の「驚愕・北朝鮮レポート」を私の家のリビングで書いていた頃、お父ちゃまのノートパソコンの横に一枚の紙切れがあり、私はそれを拾って、大事にしまっておいたことがあります。
画像


これを以下にテキストで紹介します。これは、韓国で発行された「北朝鮮理解」という本を、お父ちゃまが勉強のために訳していたものです。

“大衆教養のすばらしい手段の一つ”と見なされる北朝鮮の音楽も、やはり、“生活と人間の思想感情を真実に反映”する社会主義的な事実主義の原則に基づく。北朝鮮が音楽を通じた思想教養を強調するにしたがい、北朝鮮では器楽より歌詞を通じた思想伝達が機能する声楽曲を重視する。したがって、これらの歌の歌詞は党と金日成に対する忠誠心、革命性、労働意欲などの鼓吹(鼓舞)を追及することが大部分であり、純粋に叙情的な歌詞はほとんど見出すことができない。「朝鮮音楽600曲集」には歌曲アリア(歌劇?)190曲、歌曲302曲、映画主題歌108曲が収録されているが、歌曲のうち80%近い232曲編が直接金日成を賞賛する歌詞になっている。
 1980年代に入り、金日成に次いで金正日の賞賛歌謡かで制作されたが、“信愛する指導者金正日同志の歌”“輝く正日峰”が代表的なものとして広く普及された。これらの歌は主題が鮮明な歌詞と合唱しやすい平易なメロディー、4・4調(4分の4拍子)または4・3調(4分の3拍子)の典型的な拍子を使用し、誰もがたやすく学ぶことができるのが特徴だ。北朝鮮の音楽はその原型が多く変形された。伝統声楽中、パンソリ(伝統的な民俗芸能の一つで、語り物に節をつけて歌う)は金日成が特有のだみ声を“下品な声”(これは翻訳が難しいです――宮塚)だと批判したために、ほとんど消滅した。流暢で哀切な余韻を秘めた“西道の声”も発声の難易性のために、人民的なものではないと拒否され、伝承される民謡やその他の歌も喉からたやすく出る鼻声(翻訳注−宮塚)が混じった独特な歌声で発声し歌う。したがって、伝統音楽の素朴で流暢な味は残っていない。

 伝統音楽でも楽器の改良により音色が変わった。1962年以後、伝来の楽器の制限性(5音階)を克服し、いくら複雑な曲でも自由自在に演奏するようにするという名目で、音楽の改造運動を繰り広げ、伝統楽器を12音の半音体系に変造させた。例えば、カヤグム(朝鮮の琴)は綿○糸で組んだ紐の代わりに、鉄で造った紐を使用し、弦楽器の弦つなぐ絹糸や綿糸の紐をなくし、弦を18保温またはそれ以上に改造した。伝統楽器を新たに製作したりもいsたが、○○○を改良した33弦の玉流琴が製作され、伝統音楽で必須的に演奏されている。

 大衆歌謡は労働意欲の鼓吹(鼓舞)のための経済煽動歌謡などが、経済現場で演奏されるのを時々見ることができるが、この時に使用される楽器はアコーディオンやメロディオン、メロデーカー(?)、管楽器などだ。しかし、1990年以後、北朝鮮全域で愛を主題にした“フィパラム(口笛)”が旋風的な人気を得ており、またポップグループの「普天堡電子楽団」「旺載山軽音楽団」の講演は、北朝鮮では大衆的な人気を得ている。一方、北朝鮮の音楽科養成は、各道(日本の都道府県に相当)に一つずつ設置された芸・体能専門学校で初期教育を実施、優秀な素質を持った児童は集中教育される。


つまり、田月仙女史は別に禁じられた歌い方をしていたわけではない、ということです。金日成・金正日が好む歌い方で、金日成・金正日が推奨する不朽の古典的名作革命歌劇「血の海」(ピパダ)のアリアを歌ったわけです。

田月仙女史はどうしてこのような記述をしたのでしょう?

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のまりんさま。はじめまして。このブログの記事について意見を述べたいので書いていいでしょうか。私も田月仙さんの「海峡のアリア」を読みとても感銘を受けました。いま出ている「月刊現代」で野村進さんが絶賛していますが、私も同じ気持ちです。それを踏まえた上で意見を述べさせてください。私の身内も北朝鮮に帰国し音楽に携わっているので、私自身が名乗ることが出来ないのは残念ですが、我々当事者にはいろんな事情があることをお察しくださったうえ、読んでくださればと思います。

のまりんさんへの意見1
2007/03/05 09:18
田月仙さんは、「かつて」としか書かれてませんが、北朝鮮では「西洋オペラ」も「西洋オペラの技術」を目指すことも批判の対象になったことがあります。さらに、宮塚先生が翻訳した文章を正しく理解しているのでしょうか? 「発声の難易性のために、人民的なものではないと拒否され、伝承される民謡やその他の歌も喉からたやすく出る鼻声(翻訳注−宮塚)が混じった独特な歌声で発声し歌う。」とあるように伝統音楽だけでなく、オペラや、ベルカントに関しても人民的なものではないと拒否され、批判されていたのです。近年はヨーロッパの音楽コンクールなどでも北朝鮮の歌手が受賞したり、クラシックに力を入れてきたのも事実ですが、少なくとも田月仙さんが北朝鮮で歌った1985年頃に革命歌劇などで歌っている北朝鮮の歌手達は、音質がソプラノでも、鼻にかかった独特な北朝鮮式の発声で歌っていました。田月仙さんが歌った「血の海」のアリアは当時の北朝鮮式発声法ではないということは正しいでしょう。私も20年前に初めて彼女の歌う朝鮮の歌を聴いたときに、それまで聞いていた万寿台芸術団の歌手と全く違った印象に衝撃を受けたことがあります。
のまりんさんへの意見2(西洋オペラ云々)
2007/03/05 09:19
次に、「血の海」の記述のことですが、本に書いてあることがすべてだとお思いですか? (偏見かもしれませんが)研究書と違って、ノンフィクションでは冗長な表現をカットするのは常です。田月仙さんが書いていないことをあたかも自分だけが知っているような表現は下品です。「金日成がお話をつくって、普通の劇として上演されたことになっています。」などは、我々の間ではごく当たり前に聞かされて来たことで、田月仙さんが知らないはずもありません。「血の海歌劇団」の事を書いたので、それにはわざわざ触れなかったのでしょう。のまりんさんの文章からは、のまりんさんがが自らの知識をひけらかすため、田月仙さんの記述が間違っているように感じられる文を書いているように思われます。


のまりんさんへの意見3(多くが知っている...
2007/03/05 09:20
次には、のまりんさんの取材源いわゆるニュースソースはどこかという疑問です。「海峡のアリア」でもわかるように、田月仙さんは北朝鮮のオペラで最高峰の指揮者と直接会い、例のバイオリニストキムソンホの記事などから見るに田月仙さんは北朝鮮の音楽家(声楽家・演奏家)と交流し取材を続けています。これが重要であることは「一時情報」であるということです。こういってはなんですが、のまりんさんは「北朝鮮の音楽」に関してはレコードやビデオ、そして北朝鮮などで出版された書籍、もしくは北朝鮮に行き来している在日朝鮮人の証言、北朝鮮からの亡命者の証言など「二次情報」を源とし、直接北朝鮮の音楽家や音楽団体の取材はしていないのではと思われますが…? (あのような国で自由取材はできないので、これは仕方のないことだと思います)。しかし研究者と言うべき人はあくまでも一次情報から得るべきでしょう。宮塚先生はだからこそピョンヤンで人民の捨てたゴミから真実を探そうとしたわけでしょう。例えば北が出した本を根拠とするというのではあれば、極端ですが北朝鮮で出た金日成や金正日の伝記まで信じないといけないでしょう? 
のまりんさんへの意見4(取材源はどこです...
2007/03/05 09:20
そういう「二次情報」のみを情報源とする研究者が、他の人の著書の内容を取り上げ、あたかも自分の知識の方が正しいかのように書くのはどうかと思います。また金親子が芸術がわかるかどうかは触れません。私の考えでは「興味はある」のは確かですが、「わかっているのか」は不確定です。断定的な表現は学者としておかしいのではないでしょうか。
のまりんさんへの意見4(取材源はどこです...
2007/03/05 09:20
結論から言うと、のまりんさんの文章から感じ取れるのは「自分のほうが田月仙さんより情報を知っているといいたげな自己主張」です。私はそう受け取りました。自分の知識をひけらかすことによってウォルソンさんを落とすような表現は学者としてどうかと思います。また、私がのまりんさんに言いたいことは、「海峡のアリア」は、宮塚先生のような大学の先生がかかれる「研究発表」ではなくあくまでもノンフィクションです。しかしあなたのような研究者は、個別の表現の端々で指摘するのが常ですが、前後の文章外の意味を読み取る感性が欠如しているのではないかということです。
のまりんさんへの意見5(結論)
2007/03/05 09:21
さきほどの一次取材=ニュースソースの一次情報が大切だということですが、田月仙さんの「海峡のアリア」に載っている話には専門の研究者にはよく知られた話(たとえば「鉄道唱歌=学徒歌」など)もありますが、「海峡のアリア」では確実に一次証言者と一次資料に基づいて田月仙さんが書いています。それが本当のノンフィクションであり研究だと私は思います。その点はのまりんさんはどうですか?
のまりんさんへの意見6(追補と疑問)
2007/03/05 09:21

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